それぞれのサービスに分離してデータが保存されてしまっている為、締め処理は手作業の一大作業…
今回は自社SaaSを展開するお客様の事例についてお話しします。従量課金制のSaaS事業を運営しており、エンドユーザーの月間利用量に応じて請求金額が決定されるビジネスモデルです。今回は、この企業の営業部門の担当者視点でお伝えします。
この企業では、営業担当者が毎月の請求金額を計算し、部門としてこれを取りまとめ、経理部門に連携するという業務フローを採用しています。

自社でSaaSを展開されているだけあって、個々のシステム自体は非常に優れています。自社SaaSサービスはAWS上に構築され、利用データはPostgreSQLに保存されています。顧客との商談状況や契約内容・プラン情報はSalesforceで管理。会計処理にはfreee会計を活用し、売上情報や外注費を管理しています。さらに、freee会計には詳細が記載されない広告宣伝費やその他費用の詳細情報は、別途スプレッドシートで管理されています。
一見すると問題のないシステム構成に思えますが、スピード優先で部門ごとに個別にシステムを導入してきたため、それぞれのシステムが連携していません。その結果、毎月の締め処理では手作業での集計作業を人海戦術で対応するという課題を抱えていました。

ビジネス規模が小さいうちは何とか対応できていたものの、顧客数の増加やプラン体系の複雑化に伴い、この手作業での集計作業が大きな負担となりました。本来の営業活動に時間を割けなくなり、企業活動そのものに影響を及ぼすようになったのです。
営業担当者の純粋な営業時間を確保することは、企業活動において極めて重要です。本ブログでは、具体的にどのような手作業の集計業務が発生しているのかを詳しく解説し、弊社のPassworkがそれらの課題をどのように解決するのかをご紹介いたします。
「手作業での集計のオンパレード」成長企業に特によく見られる社内の運用の実態
弊社PraztoはSalesforceの導入支援を主事業として運営しており、新規導入だけでなく、既存ユーザーの運用改善も多数サポートしてきました。この運用改善の過程で、手作業での集計に苦しむお客様のケースを数多く目にしてきました。特に急成長中の企業では、ビジネスの拡大に社内の運用体制が追いつかず、このような状況に陥る傾向が顕著です。

よくある以下のパターンを解説していきます。
月次の売上の集計作業
従量課金制のサービスでは、月次の利用量を把握することが必要です。この情報はPostgreSQLに保存されていますが、営業メンバーは通常直接アクセスできません。そのため、IT担当者が情報を整形・集約して営業担当者に提供しています。
次に、この使用量を請求金額に変換するために、各顧客の契約情報を参照する必要があります。契約情報はSalesforceに保存されているため、営業担当者がレポートを使用してデータをエクスポートします。
そして、ExcelやGoogle スプレッドシートを使い、契約データと使用量データをVLOOKUP関数で結合し、SUMIF関数で金額を集計するという、複雑なシート作成作業が発生します。
最終的に、整形した売上一覧を経理担当者にファイルとして連携し、経理担当者がさらに整形してfreee会計にインポートするという多段階のプロセスを踏みます。
月次のコストの集計作業
この企業ではSalesforceに売上だけでなく費用も記録し、顧客ごとの収益性を管理しています。このコスト情報の元データはfreee会計に保存されている外注費などです。
営業部門は、経理部門がfreee会計から抽出したファイルの形でコスト情報を受け取り、それをSalesforceにインポートしています。
また、freee会計には記録されない粒度の費用データ(キャンペーン単位や按分費用など)は、営業部門が個別にスプレッドシートで管理しています。これらのデータも月次で締めて、Salesforceにファイルとしてインポートする必要があります。
課題が深刻化…人的作業によるミスでデータ不整合が発生し、後から原因追跡も困難なため、データの信頼性が徐々に低下していきます。
このような手作業での集計が中心となると、人的ミスは避けられません。請求金額の誤りはお客様からのクレームにつながりますし、Salesforceへの登録ミスが蓄積されれば、データの品質低下を招きます。
これは今後の事業成長の前に必ず対応すべき課題です。そして、このような問題の解決に最適なのが、弊社が提供するEAI・ETLサービス「Passwork」です
つながるETL “Passwork”で解決できます!!

Passworkは、様々なシステムへのコネクタを持つEAI・ETLサービスであると同時に、データの変換や集計までノーコードで実行できる点が大きな特徴です。さらに、Salesforceやfreee会計への出力時に、それぞれの固有設定に対応した柔軟な保存処理が可能な点も強みとなっています。

Passworkを導入すれば、この図のように処理を完全に自動化し、連携まで一貫して行うことができます。特に注目すべきは、突合と集計までを自動化している点です。Salesforceから抽出した契約データと、PostgreSQLから抽出した利用量データを自動的に突合・集計し、それを直接freee会計にインポートします。
人の手を介さないためヒューマンエラーを排除でき、万が一処理中にエラーが発生しても、異常終了によりデータは破損せず、適切なガバナンスのもとでエラーの原因調査、Passworkのフロー修正、再実行が可能です。つまり、後から経緯を追跡できない事態を防止できるのです。
【Passworkならでは】ビジネスユーザーを想定したUI/UX
上記のような複雑な連携を実現できるPassworkですが、「システムだから難しいんでしょ」「ノーコードツールといっても、それぞれのシステムに詳しくないと使えないんでしょ」と思われるかもしれません。しかし、そんなことはありません。
Passworkの最大の特徴は、ビジネスユーザーを想定したUI/UXです。専門的な知識がなくても直感的に操作できる画面設計を基本に構築されており、IT部門に頼ることなくビジネス部門のユーザーが自ら設定を行うことが可能です。
【Passworkならでは①】直感的な画面の操作感
ここからは、UI/UXが優れているとは具体的にどういうことなのかを見ていきましょう。



こちらが今回の処理の設定画面です。1つ目の画面はフローの一覧画面になります。ここで一連の処理をフローとして定義していきます。今回のケースでは以下の2つのフローで構成されています。
- 売上の締め処理の自動化(売上の連携)
- コストの締め処理の自動化(コストの連携)
2番目と3番目の画面は、それぞれ売上の連携とコストの連携のフロー定義画面です。売上の連携では以下の操作が一連の処理として実行されるように設定されています。
- 「PostgreSQLから従量課金のデータを取得する」
- 「Salesforceから契約プランのデータを取得する」
- 「SalesforceとPostgreSQLのデータを結合する」
- 「当月の売上金額を集計する」
- 「freeeに当月の売上金額を登録する」
左のサイドメニューからドラッグ&ドロップで各処理を配置し、それぞれのノードをマウス操作で関連付けていきます。左から右へと処理が流れていく様子が直感的に理解できる設計となっています。
この視覚的なフロー設計により、プログラミングの知識がなくても、業務フローをそのままシステムに落とし込むことができるのです。
【Passworkならでは②】内部的なAPIのつくりを把握しなくてよい
もう1つの大きな特徴が、ユーザーが内部的なAPI仕様を意識する必要がないという点です。プログラムコードを書かなくてもよいというのが一般的な「ノーコードサービス」の定義ですが、では画面からプログラムで使用するパラメータを設定できれば、それだけで「真のノーコードサービス」と言えるのでしょうか。
弊社はそれは違うと考えています。freee会計を例に挙げると、APIにより損益計算書(PL)のデータを取引先ごとに取得するためには、breakdown_display_typeパラメータに「partner」と指定する必要があります。
仮に画面上からbreakdown_display_typeを指定でき、テキストボックスで値を設定する作りになっていて、ユーザーに「partner」と入力させることを求めていたとします。この場合、ビジネスユーザーはこれを適切に使いこなせるでしょうか。ほぼ間違いなく「No」でしょう。
Passworkは、このような表面的なノーコードではなく、真にビジネスユーザーが使いこなせる操作性を追求しています。

こちらがfreee会計に対する設定画面です。事前にfreee会計のコネクタに認証設定をしておくことで、Passworkはこの認証情報を使用してfreee会計の構成を自動分析します。この分析情報をもとに、以下のような直感的な画面設計を実現しているのです。
- 取得する事業所を自動的に一覧表示
- 取得データ(損益計算書)を自動的に一覧表示
- 絞り込みパラメータとして、勘定科目等を自動的に一覧表示。指定する値も「AC001」などの内部コードではなく「外注費」などの実際の表示名
Passworkは、接続するすべてのシステムに対して同様のわかりやすい設定画面を提供しています。この「直感的な画面設計」と「内部的なAPIの構造を隠蔽する設計」により、ITの専門知識がなくても、ビジネスユーザーが自らデータ連携を構築・運用できる環境を実現しています。
まとめ
今回は、自社SaaSを展開するお客様の月次締め処理を例に、実際の運用現場でどれほど多くの手動集計作業が発生しているか、そしてPassworkがそれをどのように解決できるかをご紹介しました。
後半で解説したように、Passworkはビジネスユーザー向けに設計されており、直感的な操作性と内部的なAPI仕様の隠蔽化によって、技術的な専門知識がなくても無理なく操作できる環境を実現しています。「APIパラメータを設定できる」という表面的なノーコードではなく、「業務用語で直感的に操作できる」という真のノーコード体験を提供することで、従来は不可能だった複雑な自動化を可能にします。
SaaS事業者様の月次締め処理を自動化することで得られるメリットはとても大きいです。営業担当者は本来の営業活動に集中でき、ヒューマンエラーのない正確なデータ処理が実現し、経営者はリアルタイムで正確な事業状況を把握できるようになります。
弊社Praztoは、システム導入とシステム開発のプロフェッショナルチームです。2019年の創業以来、SIを中心に事業を拡大し、年商3億円以上の規模で300社以上のお客様にシステムを提供してまいりました。
「どのようにデータ連携を進めればよいかわからない」「システムが乱立して整理さえできていない」。そんな状態からでも、ぜひお気軽にご相談ください。弊社のコンサルタントが要件を整理し、最適な連携方法をご提案。そしてPassworkを活用した連携構築まで、一気通貫でご支援いたします。
データ連携でお悩みの方は、ぜひ弊社までお問い合わせください。