「基幹システムからExcelは出力できる。でも、そのデータをBIで活用できない」——データ活用の相談で、私たちが最も多く出会う壁のひとつです。本記事では、APIを持たない基幹システムから出力される「人が読むための帳票Excel」を、自然言語の指示だけでBIが扱えるデータに変換する、Passworkの新機能「AIプログラムノード」をご紹介します。実際の帳票を使ったデモとともに、仕組みと考え方を解説します。
01 「基幹システムのExcel」が、BI導入を止めている
多くの企業では、販売管理・原価管理・生産管理といった基幹システムが業務を支えています。システムとしての運用は完成しているものの、蓄積されたデータの活用となると、途端に話が止まってしまう。理由はシンプルです。
- システムが出力できるのは、人が読むための帳票形式のExcelやCSVだけ
- 結合セル・小計行・横持ちレイアウトなど、BIツールがそのまま読めない構造になっている
- 外部連携用のAPIが提供されていない
TableauをはじめとするBIツールが求めるのは、1行が1件のデータを表す「縦持ち」の整然としたテーブルです。帳票Excelと整然データのあいだにある「最後の1メートル」が埋められず、BI導入の検討そのものが進めあぐねてしまう——これは業種を問わず、日本の企業に共通する光景です。
基幹システムから出力される帳票Excel。人には読みやすいが、BIツールはそのまま読めない
02 従来の選択肢は、どれも「つらい」
この壁を越える方法は、これまで3つしかありませんでした。
- 毎回の手作業整形 …… 毎月・毎週、担当者がExcelを開いてコピー&ペースト。担当者が変わると止まります
- Excelマクロ …… 作った人にしか中身が分からず、属人化・ブラックボックス化します
- スクラッチ開発 …… 変換プログラムの受託開発は高額なうえ、帳票のレイアウトが少し変わるだけで壊れ、そのたびに改修費用がかかります
従来の3つの選択肢。共通する問題は「データ整形が開発案件になる」こと
共通する問題は、「データ整形」が開発案件になってしまうことです。整形のための見積もりが膨らみ、BI本体よりも連携部分が高くつく。この構造こそが、多くの商談を止めてきました。
03 AIプログラムノード:自然言語で指示し、AIがコードを書き、以後は決定論で動く
Passworkの「AIプログラムノード」は、この整形処理を開発案件ではなく製品の機能にするために作られました。使い方はシンプルです。
- Passworkと連携したAI(Claudeなど)に、帳票Excelを渡して自然言語で変換内容を依頼する
- AIが実データを確認しながら帳票の構造を読み解き、Passworkに取り込みから変換までのフローを構築する
- 変換処理はAIプログラムノード——指示(意図)と生成コードを対で保持する専用ノード——としてフローに組み込まれる
ポイントは、AIの使いどころを「作るとき」に限定していることです。私たちはこれを「ビルド時AI・実行時決定論」と呼んでいます。
- AIがコードを書くのは、フローを作る一回だけ。日々の実行では、確定したプログラムが決定論的に動きます
- つまり「AIが日によって違う結果を出す」という事故が構造的に起こりません
- 実行のたびにAIを呼ばないため、処理は高速で、ランニングコストも安定します
AIが帳票を読み解いて変換プログラムを生成。実行時にAIは呼ばれず、確定したコードが決定論的に動く
04 安全性:生成されたコードは、配備前にAIが審査する
「AIが書いたプログラムを、業務データに触れさせて大丈夫なのか」——当然の疑問だと思います。AIプログラムノードには、次の防護が組み込まれています。
- デプロイ時のAI審査ゲート …… 生成されたコードは、配備の前に安全性を自動審査されます。危険な処理やプラットフォームに不適合なコードは、登録そのものが拒否されます
- 改ざん検知 …… 審査を通過したコードだけが実行を許可され、審査後に変更されたコードは実行できません
- 意図とコードの対保存 …… 指示文(意図)と生成コード(成果物)は常にセットで保存され、修正は指示文の修正から行います。コードは閲覧できますが、直接の書き換えはできない「ガラスボックス」設計です
05 実例:帳票Excelが、そのままTableauのデータソースになる
実際のTableau導入商談での例です。お客様の基幹システムから出力されるのは、結合セルと小計行を含む帳票形式のExcel。API連携の手段はなく、「構築費用の算出もデモも難しい」と、提案が進めあぐねていた状況でした。
AIに変換内容を自然言語で依頼し、この帳票Excelを取り込んでAIプログラムノードで変換するフローをPasswork上に構築したところ、BIで扱える縦持ちデータへの変換フローがその日のうちに完成。Tableauでのデモ提示まで一気に進みました。
基幹システムの帳票Excelを、Passworkで取り込み整形してTableauへ連携する全体像
一度フローを作れば、あとは毎日・毎週の定期実行で、帳票Excelが自動的に整形されてBIに届き続けます。帳票のレイアウトが変わったときも、指示文を直して再生成するだけです。
06 デモ:実際の帳票で、やってみましょう
ここからは、実際のファイルを使ったデモです。題材は、勤怠管理システムから出力された体裁の「部門別 稼働実績報告書」(数値はすべてダミーデータ)。典型的な「人が読むための帳票」で、BIツール泣かせの要素がひと通り揃っています。
- タイトル・出力日時・単位などのメタ情報が、表の外に散らばっている
- 月ブロック(2026年8月・9月)が横持ちで並び、ヘッダーは2段の結合セル
- 部門グループ名(本社部門・工場部門)が縦の結合セル
- 小計行と総合計行が、明細行に混ざっている
デモで使う帳票Excel「部門別 稼働実績報告書」。2段の結合ヘッダー・横持ちの月ブロック・小計行を含む(数値はすべてダミー)
このデモで行う作業は、Passworkの画面操作ではありません。Claude(Web版)との対話です。ClaudeにはPasswork連携(MCP)を設定済みです。
Claudeに添付するExcelは、実データである必要はありません。AIに読ませたいのは帳票の「レイアウト」であって、中身の数値ではないからです。実運用では、数値をダミーに差し替えたサンプルファイルを渡してフローを作り、完成したフローだけを実データに向ける——という進め方ができます。「AIに業務データを読ませることになるのでは」という懸念に対しては、この建て付けで答えられます。日々の実データに触れるのは、AI審査を通過した決定論のプログラムだけです。
あとは、この帳票Excel(今回のファイルも全数値がダミーです)をClaudeに添付して、次のように依頼するだけです。
添付のExcelは、勤怠管理システム(基幹システム)から毎月出力される「部門別 稼働実績報告書」です。人が読むための帳票レイアウトなので、このままではBIで使えません。まず中身を見て構造を把握してください。
これを、BIで使えるような縦持ちのデータとして読み取れるようにしたいです。
これと同じExcelファイルが、Passworkのコネクタ「デモSFTP(Excel・ローカルDocker)」のディレクトリ /upload に「部門別稼働実績報告書_デモ用.xlsx」として置いてあります(毎月ここに最新ファイルが置かれる運用です)。
PassworkでこのSFTPからExcelを取り込み、上記の変換を行うAIプログラムノードを組み込み、デバッグ出力するフローを作ってください。
作成したフローのURLを教えてください。
Claude(Web版)での実際のやり取り。帳票Excelを添付して依頼すると、Claudeがフローを組み上げ、完成したフローのURLを報告してくる
依頼を受けたClaudeは、添付のExcelを開いて帳票の構造を読み解き、Passworkに接続してフローを組み立てていきます。SFTPからのExcel取り込み、変換プログラムの生成、AI審査、デバッグ出力の接続——ここまでをClaudeが自走し、最後に完成したフローのURLが返ってきます。できあがったフローと、実行後の出力データがこちらです。
Claudeが作成したフローの設定画面。フロー名称から説明文まで、Claudeが整えた状態で納品される
フロー定義。SFTPからのExcel取り込み → AIプログラムノード「稼働実績 縦持ち化」→ デバッグ出力、という構成をClaudeが組み上げた
実行結果の縦持ちデータ(スプレッドシートに展開して確認)。1行が「部門 × 年月 × 指標」の1レコードになっている
| 対象年月 | 部門グループ | 部門 | 指標 | 値 | 単位 | 集計方法 | 帳票名 | 出力日時 | ファイル名 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2026-08-01 | 本社部門 | 営業部 | 在籍人数 | 13 | 人 | 合計 | 部門別 稼働実績報告書(2026年度 上期) | 2026-10-03 09:12:00 | 部門別稼働実績報告書_デモ用.xlsx |
| 2026-08-01 | 本社部門 | 営業部 | 出勤日数 | 20.5 | 日 | 平均 | 部門別 稼働実績報告書(2026年度 上期) | 2026-10-03 09:12:00 | 部門別稼働実績報告書_デモ用.xlsx |
| 2026-08-01 | 本社部門 | 営業部 | 所定内 | 1946 | 時間 | 合計 | 部門別 稼働実績報告書(2026年度 上期) | 2026-10-03 09:12:00 | 部門別稼働実績報告書_デモ用.xlsx |
| 2026-08-01 | 本社部門 | 営業部 | 時間外 | 238 | 時間 | 合計 | 部門別 稼働実績報告書(2026年度 上期) | 2026-10-03 09:12:00 | 部門別稼働実績報告書_デモ用.xlsx |
| 2026-08-01 | 本社部門 | 営業部 | 深夜 | 36.1 | 時間 | 合計 | 部門別 稼働実績報告書(2026年度 上期) | 2026-10-03 09:12:00 | 部門別稼働実績報告書_デモ用.xlsx |
| 2026-08-01 | 本社部門 | 営業部 | 稼働率(%) | 93.7 | % | 平均 | 部門別 稼働実績報告書(2026年度 上期) | 2026-10-03 09:12:00 | 部門別稼働実績報告書_デモ用.xlsx |
| 2026-09-01 | 本社部門 | 営業部 | 在籍人数 | 12 | 人 | 合計 | 部門別 稼働実績報告書(2026年度 上期) | 2026-10-03 09:12:00 | 部門別稼働実績報告書_デモ用.xlsx |
| 2026-09-01 | 本社部門 | 営業部 | 出勤日数 | 20.6 | 日 | 平均 | 部門別 稼働実績報告書(2026年度 上期) | 2026-10-03 09:12:00 | 部門別稼働実績報告書_デモ用.xlsx |
| 2026-09-01 | 本社部門 | 営業部 | 所定内 | 1862 | 時間 | 合計 | 部門別 稼働実績報告書(2026年度 上期) | 2026-10-03 09:12:00 | 部門別稼働実績報告書_デモ用.xlsx |
| 2026-09-01 | 本社部門 | 営業部 | 時間外 | 83 | 時間 | 合計 | 部門別 稼働実績報告書(2026年度 上期) | 2026-10-03 09:12:00 | 部門別稼働実績報告書_デモ用.xlsx |
| 2026-09-01 | 本社部門 | 営業部 | 深夜 | 9.9 | 時間 | 合計 | 部門別 稼働実績報告書(2026年度 上期) | 2026-10-03 09:12:00 | 部門別稼働実績報告書_デモ用.xlsx |
| 2026-09-01 | 本社部門 | 営業部 | 稼働率(%) | 94.4 | % | 平均 | 部門別 稼働実績報告書(2026年度 上期) | 2026-10-03 09:12:00 | 部門別稼働実績報告書_デモ用.xlsx |
| …(全10部門 × 2ヶ月 × 6指標 = 120行) | |||||||||
結合セルは解消され、小計・総合計は取り除かれ、横持ちの月ブロックは「部門 × 年月 × 指標」で1行の縦持ちに積み直されました。帳票の外に散らばっていた帳票名・出力日時などのメタ情報まで、各行の列として拾われています。Tableauがそのまま接続できる、整然としたテーブルです。
ここまでにかかる作業は、Claudeへの依頼文を1つ書くことだけ。「ビルド時AI」とは、まさにこの対話のことです。生成されたプログラムは前述のAI審査ゲートを通って配備され、以後は毎月SFTPに置かれる最新のExcelを、確定したフローが決定論的に読み続けます。
07 費用の話:整形は「開発」ではなく「製品の機能」
従来なら、この整形処理だけで数十万円〜の受託開発になっていたはずです。Passworkでは、AIプログラムノードによる整形フローの構築は製品機能の範囲内であり、追加の開発費用はかかりません。BIへの連携だけであれば、Passworkの月額利用料のみでご利用いただけます。
「connect(つなぐ)は開発ではなく製品の機能にする」——これはPassworkの一貫した設計思想です。接続や整形を製品の機能にしているからこそ、費用を最初に約束でき、商談も導入も前に進みます。
08 まとめ:「APIがない」は、もう見送りの理由にならない
帳票形式のExcelしか出ないシステム。CSVしか出力できない業務ツール。APIのない基幹システム。これまで「連携できないから」とBI導入を見送ってきたデータのほとんどは、実は接続対象です。
あらゆるデータを、分析できる形へ。データの形が理由で止まっているプロジェクトがありましたら、ぜひ一度ご相談ください。実際のファイルを使ったデモを、その場でご覧いただけます。
データ連携の自動化
で始めませんか?
SaaS・データソース・DWHをノーコードでつなぎ、AIが連携フローの構築を支援します。
「何を・どの条件で・どこにつなぐか」の設計から、専門のコンサルタントが無料でご相談承ります。