オブジェクトを選び、フィールドをマッピングし、突き合わせキーを決めて——これまで数日かかっていたフロー構築が、AIとの会話だけで数分の作業に変わりつつあります。ただしAIがその場で自由にデータを書き換えているわけではありません。AIが担うのは意図の構造化まで、実際の書き込みは検証済みの決定論的な処理という設計が、この仕組みの安全性を支えています。
01 フロー構築が「設定作業」だった時代
データ連携のフローを組むという作業は、これまで専門知識を要する設定作業でした。対象のオブジェクトを選び、必要なフィールドを一つずつ確認し、突き合わせキーを決め、出力先のフィールドとマッピングを結ぶ。条件を一つ変えるたびに設定画面を開き直し、テスト実行で結果を確認し、また設定画面に戻る——この往復に、複雑な連携であれば数日を要することも珍しくありませんでした。
特にSalesforceやkintoneのようにオブジェクトやフィールドの数が多いシステムでは、「どのフィールドが何を意味するのか」を理解すること自体が最初の壁になります。情シス担当者や外部の実装パートナーに頼らざるを得ず、現場の「こういう連携が欲しい」という要望が形になるまでにタイムラグが生まれていました。
もしこの設定作業そのものが、管理画面を操作する代わりに会話で進められるとしたらどうでしょうか。Passworkが備えるAIチャットアシスタントは、まさにこの発想から生まれています。
02 AIチャットで何が起きるか(会話例つき)
Passwork上のAIチャットに「こういう連携を作りたい」と伝えると、AIが不足している情報を質問しながら、フローの雛形を組み立てていきます。実際の会話は、次のような流れになります。
- ①要望を伝える
「Salesforceの商談をkintoneに連携したい」——最初は、この程度の粗い要望で構いません。 - ②AIが不足情報を質問する
AIが「対象は全商談ですか、それとも受注済みだけですか?」「kintoneのどのアプリに反映しますか?」「突き合わせキーは何にしますか?」のように、フローの成立に必要な条件を一つずつ確認します。 - ③フィールド仕様をその場で参照する
「商談のフィールド一覧を見せて」と聞けば、Salesforce側のフィールド定義やサンプルデータをチャットの中でそのまま確認できます。設定画面とドキュメントを行き来する必要がありません。 - ④フローの雛形が組み上がる
必要な条件が揃うと、AIが入力・変換・出力の各ノードを含んだフローの雛形を生成します。 - ⑤自然言語でノードを微調整する
雛形ができたあとも、「このノードを削除して」「出力先をSlackに変えて」のように、会話のまま各ノードの設定を修正できます。
迷ったときは「次は何をすればいいですか?」と聞けば、AIが次に決めるべき手順を提案してくれるため、フロー構築に不慣れな担当者でも迷わず設定を進められます。
03 裏側の仕組み|判定はAI、書き込みは決定論
会話だけでフローが組み上がると聞くと、AIがその場でデータの読み書きロジックを自由に生成しているように思われるかもしれません。しかしPasswork内部の設計はそうではありません。AIが担うのは、会話から対象オブジェクト・絞り込み条件・マッピング・突き合わせキーといった構造化された意図を導き出すところまでです。実際にフローとして組み立て、データを読み書きする部分は、あらかじめ検証されたロジックによる決定論的な処理に委ねられます。
言い換えると、「何をしたいかをAIが理解する」判定の工程と、「決まった手順で確実にフローを組む・データを動かす」書き込みの工程が、はっきり分離されています。この一線があるからこそ、Salesforceの商談やkintoneの案件といった本番の業務データに関わる設定を、会話に任せても安心して扱えます。
会話から導き出されるのは「意図」であり、フローの実体は毎回同じ検証済みロジックで組み立てられます。AIの自由な生成に業務データの読み書きを委ねるのではなく、構造化された意図を確認したうえで決定論的に実行する——この設計が、AIチャットで設定を任せられる根拠になっています。
04 人間は何を確認すればいいか
AIが雛形を組み立ててくれるとはいえ、そのまま本番に反映するわけではありません。Passworkでは、AIが生成したフローはあくまでドラフトとして提示され、人が内容を確認したうえで本番に反映する運用になっています。確認すべきポイントは、次の3つに整理できます。
この「ドラフト&確認」の運用があることで、AIに任せる範囲と人が責任を持つ範囲がはっきり分かれます。会話で組み立てる速さと、本番データを扱う安心感を両立させる仕組みです。
05 Agentic ETLの中での位置づけ
Passworkは、SalesforceやkintoneなどのコネクタをつないでSOQLやAPIによる取得・変換・upsertをノーコードで組めるデータ連携サービスです。AIチャットによるフロー構築は、この連携を「開いて設定するもの」から「話しかけて組み立てるもの」へと変えていく取り組みの一部です。フローを組む段階だけでなく、組んだあとの実行・監視・調査も会話で行えるようにすることが、私たちの考えるAgentic ETL——現場で動く、対話で操作する、AIが判断するデータ統合——の全体像です。会話から連携を実行・監視する側の具体例はSlackからSalesforce連携を操作する方法で解説しています。
提供元のPraztoは350社以上の連携・導入支援実績があります。フィールド構造や業務ルールを踏まえたフロー設計のノウハウがAIチャットの質問設計にも反映されており、初期構築は1ヶ月のサポート付きで伴走できます。
06 部門別の活用シーン3つ
AIチャットによるフロー構築は、実際の現場ではどのような場面で使われるのでしょうか。営業企画、情報システム部門、経営企画という3つの立場から、具体的な活用シーンを見ていきます。
①営業企画|新しい代理店向けレポート連携を、要件定義書なしで組み立てる
営業企画の担当者が「新しい代理店にも案件状況を共有したい」とAIチャットに伝えると、AIが対象パートナー・共有範囲・出力先を質問しながらフローの雛形を組み立てます。エンジニアに要件定義書を渡して待つ必要がなく、思いついたその日のうちにドラフトを確認できます。
②情報システム部門|複雑な突き合わせ条件も、会話で確認しながら設計する
情シス担当者が「商談IDと契約番号の両方が一致する場合だけ更新したい」といった細かい突き合わせ条件をAIチャットに伝えると、AIがフィールドの型やサンプルデータをその場で参照しながら、条件を構造化してフローに反映します。設計ドキュメントと設定画面を往復する手間が減り、複雑な条件でも会話の中で詰め切れます。
③経営企画|稟議前の連携ドラフトを、その場で作って持ち帰る
経営企画の担当者が「今度の全社会議までに、部門別の受注データをkintoneに集約する連携を用意したい」とAIチャットに伝えると、必要な条件を確認しながらドラフトが組み上がります。実装の見積もりを待たずに、会議に持ち込める具体的な設計案をその場で用意できます。
07 まとめ:会話が、設定画面になる
AIチャットによるフロー構築の要点は、会話から意図を構造化するのはAI、実際にフローを組み立てて実行するのは決定論的な処理という分離を保ったまま、数日かかっていた設定作業を数分の会話に圧縮すること。生成された雛形はあくまでドラフトであり、マッピング・テスト実行・スケジュールの3点を人が確認してから本番に反映します。まずは既存の連携を一つ、AIチャットで組み立て直すところから試してみてください。
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